この記事は、萩一晶氏著の『ホセ・ムヒカ 日本人に伝えたい本当のメッセージ』の書評と、この本から学んだことなどを紹介している記事です!
ホセ・ムヒカ 日本人に伝えたい本当のメッセージ
皆さんは、ウルグアイ前大統領の『ホセ・ムヒカ』さんをご存知でしょうか?
『世界で1番貧しい大統領』として数年前に世界から脚光を浴びた当時のウルグアイ大統領です。

まずもともとゲリラとして反乱を起こした人物が大統領になったということと、素朴な人柄、正直な発言の数々、そして大統領官邸には入居せず質素な自宅で暮らしたという今までになかったキャラクターで、
世界中のメディアが取り上げ、ニュースやドキュメンタリーになりました。
しかし、この本を書いた朝日新聞記者の萩一晶さんは、そうやってメディアが取り上げていることで、ムヒカさんが本当に伝えたかったメッセージが伝わらなかったのではないかと懸念していました。
そのため、その懸念を解消しつつご本人が本当に伝えたかったメッセージを伝えるために、この本を書くことにしたそうです。
この本は、以下のような構成になっています。
第2章 花売りからの出発
第3章 大統領への道
第4章 哲人政治家が残したもの
第5章 「ムヒカ現象」が映した日本のいま
第6章 もっと幸福感のある社会に
第7章 ホセ・ムヒカさん独占インタビュー
ムヒカさんの遍歴を辿りながら、なぜゲリラにもなった人が大統領になったのか、そしてムヒカさんの伝えたかったメッセージとは何か、をご本人の言葉も交えて書き上げています。
なぜゲリラにもなった人が大統領になったのか
ムヒカさんはもともと路上で花屋をしたりして過ごしていて、全く裕福な家庭ではありませんでしたが、不幸にも感じていなかったそうです。
そんな折、ウルグアイで軍政が始まったり、伝統的な政党達が問題を起こしたりするなどして、ウルグアイでは貧富の差が開き多くの人が極度の貧困状態に陥ります。
不平等な世の中を変えていきたい、すべての人が平等に暮らせる世界を作りたい。
このような思いを持ったムヒカさんは、仲間と共に『トゥパマロス』という極左都市ゲリラ組織に加入して、ゲリラを起こします。
ゲリラ活動の中では、投獄4回、脱獄2回。銃撃戦で6発撃たれ、重傷も負いました。 軍事政権が終わるまで14年近く収監されていたこともありました。
特に最後の14年間冷たい牢獄で過ごしたことが、彼の忍耐強さを作り上げたそうです。
釈放後は、武器を捨てて様々な小さな政党や左派敵組織が一体となった『拡大戦線』という政党組織を牽引して、2010年にはついに大統領となります。
ちなみにこの拡大戦線は、今でも3期続けて与党としてウルグアイの政治を担っています。
しかしなぜ過激派だった彼が大統領になったのか、その1番の理由の一つは、ムヒカさんの言葉の中にありました。
考えを同じくする仲間を見つけ、組織を作り、粘り強く戦う。そうやって、この社会を少しでも良くし、次の世代に引き継ぐことにこそ、生きる意味がある。
私にとってこの言葉はシンプルながらにとても刺激的でした。
ムヒカさんは、自分の愛する家族、仲間、恋人のことを本当に大切によく考え、世の中を少しでも良くしたい、と思ったことを、仲間とよく話して行動に移してきました。
そんな彼の行動力を見て、自分はどうしているだろうと思いました。
今の政治について、生活について、変えたいと思っても、文句だけは言って少しも行動に移していなかったのではないか?
ハッとさせられる思いでした。
そしてさらに彼はこうおっしゃっていました。
強い者、学ぶチャンスを得たものには、そうでなかった人のために役立つという大きな責任がある。
自分が良ければそれでいい、ではなく世界中のみんなでこの世の中を少しでもよくしていくために努力することが大切だと教えられた気がしました。
改めてムヒカさんが大統領になったことは、
過激な反乱を起こして、何度牢屋に入れられようとも、バッシングを浴びようとも、仲間とその仲間のすべての大切な人たちを守りたいという一心で、諦めず行動し続けた結果なのだと思いました。
ムヒカさんの伝えたかったメッセージは何か
その他に、本の中でたくさんの魅力的で刺激的な言葉がありました。
これらの言葉が、私たち日本に伝えたいメッセージだと思い、いくつかご紹介させていただきます。
貧乏な人とは、少ししかモノを持っていない人ではない。無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ。
高度経済成長からの日本は、それまでと違って見違えるほどに豊かになったけれど、本当の豊かさを失いつつもあると思います。
なぜなら、経済発展ばかり気にして家族との時間が疎かになったり、他人のことが信用できなくなったり、なんでもお金で解決できるようになってしまったり。
お金をめちゃくちゃ稼いでも、どこか虚しい気持ちになって問題を起こしてしまう人が多いのは、過度な経済成長への執着心からくるという側面もあると思います。
そんな現状にムヒカさんは以下のように述べています。
街角で1人の女性に恋をしてしまうことに、経済がなんの関係がある?
そこまで躍起になってお金稼ぎばかりに励む前に、まずは目の前の大切な人を大切にできているか?が非常に大きなテーマだと思います。
日本の政治家や、大企業の幹部などでスキャンダルが多いのは、やはり私利私欲に走ってしまっている傾向があるという側面も関係しているのだと思います。
では、仕事もせず家族や仲間との時間だけを大切にしたらいいのかというと、もちろんそんなことはありません。
ドン・キホーテか、サンチョ・パンサか、理想が現実か、これのバランスを取ることが最も重要なテーマだ。
ここでいうドン・キホーテとは(激安の殿堂ではなく)道化的な存在、つまり『理想』で、サンチョ・パンサとは世間的な常識、つまり『現実』としています。
世の中いいことばかり夢見ることもとっても大事だが、目の前の難しいことから目を背けてもいけない。
どちらもバランスをとって一生懸命取り組んでいかないといけない。
そんなメッセージか込められていると思います。
仲間と共に世の中をより良くしようと努めることが、私たちの責任
いかがでしたでしょうか。
今回は、萩一晶氏著の『ホセ・ムヒカ 日本人に伝えたい本当のメッセージ』をご紹介してきました。
一言一言がシンプルながらに刺激的で、読んでいて胸を打たれるシーンがたくさんありました。
また、世間で『世界で1番貧しい大統領』として紹介されていたムヒカさんですが、貧しいのではなく、質素な生活で十分なのだということと、無駄を削る生活が好きだということを知ることができました。
そんなムヒカさんの言葉の中に込められたメッセージの数々の中で、私が1番感じ取ったことは、